ピラティスは、3か月以上続く慢性的な腰痛を和らげる助けになる運動です。日本の腰痛診療ガイドラインは、慢性腰痛に運動療法を「行うことを強く推奨」としていて、運動の種類を比べた研究のまとめでも、ピラティスは痛みを減らす見込みがいちばん高い運動でした。
ただし、ぎっくり腰の直後のような痛み始めの時期や、しびれ・発熱をともなう腰痛は、運動より先に受診が必要です。やり方を間違えると痛みが強くなることもあるので、腰の状態に合わせて動きと強さを選ぶことが大切です。この記事では、研究とガイドラインでわかっていること、腰痛が悪化する原因と避けたい動き、腰痛がある人のスタジオの選び方と、レッスンの前に伝えることまでまとめました。
ピラティスは腰痛に効く?研究とガイドラインでわかっていること

結論から言うと、慢性的な腰痛には効果が期待できますが、だれの腰痛でも治る運動ではありません。日本のガイドラインと、複数の研究を集めて結果をまとめた分析(メタ分析)を表にしました。
| 腰痛診療ガイドライン2019 | 3か月以上続く慢性腰痛に、運動療法は「行うことを強く推奨」(推奨度1・エビデンスの強さB)。4週間未満の急性腰痛と、3か月未満の亜急性腰痛は根拠が不明として推奨なし 出典:日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』(推奨度はケアネット「腰痛診療ガイドライン2019発刊、7年ぶりの改訂でのポイントは?」で確認) |
|---|---|
| 運動の種類を比べた研究のまとめ(2022年) | 慢性腰痛の118の研究・9,710人のまとめ。痛みと生活の支障を減らす見込みがいちばん高かったのがピラティス。効果が大きかったのは週1〜2回以上・3〜9週の内容 出典:Fernández-Rodríguez R ほか「Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain」Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy 2022年 |
| ピラティスの研究のまとめ(2013年) | ほとんど何もしない場合と比べて、短い期間で痛み(0〜10の尺度で1.6点)と生活の支障が軽くなった。ほかの運動と比べると差は無かった 出典:Miyamoto GC ほか「Efficacy of the Pilates method for pain and disability in patients with chronic nonspecific low back pain」Brazilian Journal of Physical Therapy 2013年 |
2022年のまとめではピラティスの評価が高い一方で、2013年のまとめでは、ほかの運動と比べてはっきりした差は出ていませんでした。2022年のまとめの対象も、18〜65歳の慢性腰痛の人です。ピラティスは「腰痛に効く特別な治療」ではなく、続けやすい運動療法の有力な選択肢の1つと考えるのが正確です。
痛みが出てから4週間未満の急性の腰痛には、運動療法がよいかどうかの根拠がまだありません。痛み始めの時期は無理に動かさず、痛みが落ち着いてから始めましょう。
ピラティスが腰痛に役立つ3つの理由
お腹と背中の奥の筋肉で腰を支えられるようになる
ピラティスは、お腹を薄く引き締めたまま呼吸をして、お腹や背中の奥にあるインナーマッスルを使い続ける運動です。日本整形外科学会も、腰痛には腰の支持性を高めるための運動や体操を続けるとよいとしています。腰まわりが安定すると、立つ・座る・物を持つといった動きで腰にかかる負担を分けやすくなるでしょう。
背骨と骨盤を正しい位置で動かす練習になる
反り腰や猫背のように、骨盤や背骨の位置がくずれたままだと、腰の一部に負担が集まりがちです。ピラティスは背骨を1つずつ曲げ伸ばしし、骨盤の傾きを確かめながら動くので、自分の姿勢のくせに気づき、正しい位置を体で覚えられます。
関節への負担が小さく、運動が久しぶりでも続けやすい
ピラティスは寝た姿勢や座った姿勢の種目が多く、ジャンプや重い器具を使いません。マシンを使うピラティスは、ばねの力で動きを支えたり負荷を変えたりできます。腰に不安がある人でも、できる範囲から少しずつ強さを上げられるのが、ほかの筋トレと違うところです。
ピラティスで腰痛が悪化する原因と避けたい動き
ピラティスで腰が痛くなるときは、運動そのものより、やり方や強さが今の腰の状態に合っていないことがほとんどです。よくある原因を4つ挙げます。
- 痛みをがまんして、回数や形を合わせようとする
- 動きの途中で息を止め、お腹の支えが抜ける
- 反り腰のまま、腰を反らす動きをくり返す
- 動きを覚える前に、強度の高いグループレッスンに入る
痛む動きの向きで、避けたい種目は変わる
腰を反らすと痛い人と、前に丸めると痛い人では、注意したい動きが逆です。自分がどの向きで痛むかを先に確かめておくと、レッスンで避ける種目をインストラクターに伝えやすくなります。
| 腰を反らすと痛い | うつぶせで上体を起こす動き(スワン)、お尻を高く上げて腰を反らせるブリッジ、立って上体を後ろに反らす動き |
|---|---|
| 前に丸めると痛い | あお向けから上体を丸めて起こす動き(ロールアップ)、頭と肩を浮かせたまま続ける腹筋の動き(ハンドレッド)、立って深く前屈する動き |
| ねじると痛い | 座って上体をひねる動き(スパインツイスト)、横向きで大きく体をひねる動き |
表は、痛みが出やすい動きの目安です。痛む向きは人によって違い、同じ種目でも角度や範囲を小さくすればできることもあります。どの種目をどこまでしてよいかは、医師やインストラクターと相談して決めましょう。
ピラティスを始める前に受診したほうがよい腰痛のサイン
日本整形外科学会は、次のような症状をともなう腰痛は、放っておいたり自分で対処したりせず、すみやかに整形外科を受診するよう呼びかけています。当てはまるときは、ピラティスを始める前に受診してください。
- 安静にしていても痛みが軽くならない
- 痛みがしだいに悪化している
- 熱がある
- 脚がしびれる、力が入らない
- 尿漏れがある
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、側弯症など、すでに診断を受けている人は、運動してよいかと避ける動きを主治医に確かめてから始めましょう。ぎっくり腰のあとも、痛みが引くまではレッスンを休むのが安全です。
腰痛がある人のピラティススタジオの選び方
最初はマンツーマンかセミパーソナルから始める
腰痛がある人は、インストラクターが自分の体だけを見てくれるマンツーマンから始めると安心です。痛む動きをその場で別の種目に変えてもらえ、強さも細かく調整してもらえます。動きを覚えて痛みも落ち着いてきたら、月額の安いグループレッスンに移る方法もあります。
ピラティスのおすすめスタジオ12選で比べた12社を、レッスンの形式で分けると月4回の月額は次のとおりです(2026年の各社の公式サイトの情報。税込、入会金などは別)。
| マンツーマン(3社) | 月4回 28,800円〜40,000円 体の状態に合わせて種目と強さを一人のために変えてもらえる。腰痛がある人の最初の選択肢 |
|---|---|
| セミパーソナル(1社) | 月4回 19,800円 最大3名ほどで、インストラクターの目が届きやすい。痛みが軽い人に |
| グループ(8社) | 月4回 9,680円〜17,050円 月額は安いが、一人ひとりの調整には限りがある。動きを覚え、痛みが落ち着いてから |
マンツーマンの月額は、グループの高いほうと比べても1万円以上高くなる計算です。たとえば、最初の数か月だけマンツーマンで動きを覚え、そのあとグループに切り替えると、安全に始めつつ月額も抑えられます。
インストラクターの資格と、腰痛の人への対応を確かめる
ピラティスの指導者の資格は民間の資格で、内容はさまざまです。腰痛が気になる人は、理学療法士など医療の国家資格を持つインストラクターがいるかも選ぶ材料になります。体験の予約のときに「腰痛があるが受けられるか」「痛むときは別の動きに変えてもらえるか」を聞いておきましょう。
体験レッスンの前にスタジオへ伝えること
体験の予約のときか、当日のカウンセリングで次のことを伝えると、最初のレッスンから腰に合わせた内容にしてもらいやすくなります。
- いつから痛むか(ぎっくり腰の直後か、3か月以上続いているか)
- 病院で受けた診断名と、医師から言われている注意
- 腰を反らすと痛いか、前に丸めると痛いか、ねじると痛いか
- 朝・長く座ったあとなど、痛みが強くなる時間や場面
- しびれの有無と、飲んでいる薬
体験ができるスタジオと当日の流れは、ピラティスの体験ができるスタジオでくわしく比べています。
自宅でできる腰にやさしいピラティスの動き
スタジオに通う前やレッスンのない日は、寝たままできるやさしい動きから試してみましょう。どれも痛みが出たらすぐにやめ、痛くない範囲だけで動かすのが前提です。
胸式呼吸(ラテラル呼吸)
あお向けでひざを立て、両手を肋骨の横に当てます。鼻から吸って肋骨を横に広げ、口から吐きながらお腹を薄くしていきます。お腹の奥を軽く締めたまま呼吸を続けるのが、ピラティスのすべての動きの土台です。5〜10回くり返します。
ペルビックティルト(骨盤を前後に傾ける)
あお向けでひざを立てたまま、息を吐きながら腰を床に近づけるように骨盤を後ろに傾け、吸いながら元に戻します。腰を反らせすぎず、小さな範囲で骨盤だけを動かすのがこつです。10回ほど行います。
キャット&カウ(四つばいで背骨を動かす)
四つばいになり、息を吐きながら背中を丸め、吸いながら胸を前に出して背中を伸ばします。腰を反らすと痛い人は、背中を伸ばす側を小さめにして、丸める動きを中心に行いましょう。5〜8回が目安です。
マットの選び方や10分のメニューは、自宅でのピラティスの始め方でまとめています。
腰痛が気になる人のピラティスならこの2社
腰痛がある人が始めるなら、医療の知識を持つインストラクターがマンツーマンで見てくれるスタジオが安心です。全スタッフが理学療法士・作業療法士のピラティススタジオDEPと、理学療法士が考案したマンツーマンのルルトを紹介します。12社すべての比較はピラティスのおすすめスタジオ12選を見てください。
ピラティススタジオDEP|全スタッフが理学療法士・作業療法士のマンツーマン
♥こんな人におすすめ
- 腰痛があり、体の状態を見てもらいながらマンツーマンで始めたい人
- 医療の現場を知るインストラクターに、痛む動きの代わりを考えてほしい人
| レッスンの形式 | マンツーマン・50分(半個室) |
|---|---|
| インストラクター | 全スタッフが国家資格(理学療法士・作業療法士)を持ち、医療機関での臨床経験は1年半〜3年以上 |
| 月4回の月額 | 28,800円(エリアA)/32,000円(エリアB)/37,200円(恵比寿東口店) |
| 初期費用 | 入会金0円(月額プラン) |
| 体験レッスン | 通常9,900円(LINE予約のクーポンで2,980円) |
| 店舗数 | 57店舗(全国) |
全国に57店舗ある、マンツーマン専門のピラティススタジオです。公式サイトによると、担当するのは理学療法士・作業療法士の国家資格を持ち、医療機関で臨床経験を積んだインストラクターだけです。レッスンは半個室で受けられます。
初回は90〜120分あり、カウンセリングと体の評価をしたうえでレッスンに入るのが流れです。腰痛の診断や痛む動きを最初に伝えておくと、その日の体の状態に合わせて種目を選んでもらいやすくなります。月額のプランは入会金・年会費・退会費がかからず、地方都市の店舗が多いのも特徴です。東京の店舗は恵比寿東口店だけなので、近くに店舗があるかを先に確かめましょう。
ルルト|理学療法士が考案した完全マンツーマンのマシンピラティス
♥こんな人におすすめ
- マシンの補助を使って、腰に負担をかけすぎずに体幹を整えたい人
- 男性も通える店舗で、一人ひとりに合わせたレッスンを受けたい人
| レッスンの形式 | マンツーマン・50分 |
|---|---|
| インストラクター | 理学療法士が考案・監修したレッスン(運営の株式会社理学ボディに理学療法士が在籍) |
| 月4回の月額 | 38,400円 |
| 初期費用 | 入会金 22,000円(体験日の入会で無料) |
| 体験レッスン | 1,000〜5,000円(店舗により異なる。45分) |
| 店舗数 | 100店舗以上(全国) |
| 男性の利用 | 可 |
理学療法士が考案した、完全マンツーマンのマシンピラティススタジオです。運営する株式会社理学ボディには理学療法士が在籍していて、解剖学をもとに一人ひとりの体に合わせてレッスンを組み立てるのが方針です。店舗は全国に100か所を超えます。
マシンはばねの力で動きを支えられるので、腰に不安がある人でも負荷を小さくして始められます。入会金の22,000円は、体験日に入会すれば無料です。なお、妊娠中はレッスンを受けられません。産後は3か月以上たち、医師から運動の許可が出ていれば通えます。
ピラティスと腰痛についてよくある質問

ピラティスで腰痛は治りますか?
慢性的な腰痛は、ピラティスを続けることで痛みや生活の支障が軽くなることが研究で示されています。ただ、原因や状態によって結果は違い、必ず治るとはいえません。痛みが続く人は、医師の診察と並行して取り入れましょう。
ピラティスで腰痛が悪化することはありますか?
あります。痛みをがまんして続けたり、腰を反らす動きをくり返したりすると、痛みが強くなることがあります。レッスン中やレッスンの翌日に痛みが増したら、その動きを止めてインストラクターに伝えましょう。痛みが続くときは受診してください。
腰痛持ちでもマシンピラティスは大丈夫ですか?
マシンはばねの力で動きを支えられるので、負荷を小さくすれば腰痛がある人でも取り入れやすい運動です。ただし、グループレッスンでは一人ひとりに合わせた調整に限りがあります。最初はマンツーマンで、腰に合う種目と強さを確かめてからにしましょう。
ぎっくり腰のときにピラティスをしてもいいですか?
痛み始めの急性の時期は、運動療法がよいかどうかの根拠がまだありません。強い痛みがあるうちはレッスンを休み、痛みが落ち着いてから再開しましょう。再開するときは、ぎっくり腰があったことをインストラクターに伝えてください。
椎間板ヘルニアでもピラティスはできますか?
症状の程度で変わるので、まず主治医に運動してよいかと、避ける動きを確かめてください。脚のしびれや力が入らない症状があるときは、先に受診が必要です。許可が出たら、医療の知識を持つインストラクターのマンツーマンから始めると安心です。
腰痛のためには週何回ピラティスをすればいいですか?
研究のまとめでは、週1〜2回以上のピラティスを3〜9週続けた内容で効果が大きく出ていました。まずは週1回のレッスンと、自宅での短い復習から始めるとよいでしょう。回数と効果の関係はピラティスの効果でもくわしく解説しています。
腰痛にはピラティスとヨガのどっちがいいですか?
どちらも慢性腰痛の運動として研究が進んでいて、体幹で腰を支える力をつけたいならピラティス、体をゆるめて柔軟性を上げたいならヨガが向いています。くわしくはピラティスとヨガの違いの記事で比べました。
まとめ|ピラティスは腰痛の状態を確かめてからマンツーマンで始めよう

ピラティスは、3か月以上続く慢性的な腰痛を和らげる助けになる運動で、ガイドラインも運動療法を強く勧めています。一方で、痛み始めの時期や、しびれ・発熱をともなう腰痛は受診が先です。
始めるときは、痛む動きの向きを確かめ、診断や注意をスタジオに伝えたうえで、マンツーマンかセミパーソナルから入るのが安全です。医療の知識を持つインストラクターがいるスタジオなら、腰に合わせた内容を組んでもらいやすくなります。スタジオ選びはピラティスのおすすめスタジオ12選から比べられます。



