マタニティピラティスは、医師から運動の許可が出ていれば、妊娠中でも取り入れられる運動です。米国産科婦人科学会(ACOG)は、妊婦向けに調整したピラティスを妊娠中に安全な運動の1つに挙げています。ただし、日本の学会や国の資料には、ピラティスを名指しして勧めたものはありません。
スタジオの受け入れは安定期(妊娠15〜16週ごろ)からが目安で、妊娠中は受け入れていないスタジオも少なくありません。この記事では、学会や WHO の指針でわかっていること、時期ごとの注意点、避けたい動きとすぐにやめるべきサイン、大手12社の妊娠中と産後の受け入れ条件までまとめました。おなかの赤ちゃんへの影響が気になる人のために、根拠にした資料も一緒に載せています。
マタニティピラティスは妊娠中にしてもいい?指針でわかっていること

結論から言うと、おなかの赤ちゃんと体に問題がなく、医師の許可がある人なら、妊娠中に体を動かすことは勧められています。学会や WHO の考え方を表にまとめました。
| 米国産科婦人科学会(ACOG) | 合併症が無ければ、妊娠中・産後も週150分以上の中くらいの強さの運動を勧める。一般向けの解説では、妊婦向けに調整したヨガやピラティスを安全な運動の例に挙げ、ホットピラティスは避けるとしている 出典:米国産科婦人科学会(ACOG)Committee Opinion No.804「Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period」2020年(2023年に再確認)、ACOG「Exercise During Pregnancy」(FAQ119。2024年更新) |
|---|---|
| 世界保健機関(WHO) | 運動を控える理由の無い妊婦と産後の女性は、週150分以上の中くらいの強さの運動と筋力の運動を。骨盤底筋のトレーニングは毎日行ってよい 出典:WHO「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」2020年 |
| 日本の産科のガイドライン(原案) | 有酸素運動は有益。転倒や接触の危険がある運動、仰向けや動かずに立ち続ける姿勢は好ましくない。強さは会話ができる程度が目安 出典:日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン 産科編2026』CQ107(パブリックコメント用の原案) |
| 厚生労働省 | 妊娠中は「無理なくからだを動かしましょう」。運動の種類と量の明確な根拠は日本ではまだ無く、新しく始めるなら医師に相談 出典:厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」解説要領(2021年) |
どの指針も、妊娠中の運動そのものは勧めています。一方で、厚生労働省の資料は、マタニティ向けのヨガなど、個別のプログラムの効果はよくわかっていないとしています。マタニティピラティスは、効果を約束するものではなく、医師の許可のもとで体を動かす方法の1つと考えるのが正確です。
マタニティピラティスはいつから・いつまでできる?
指針には「妊娠何週から」という決まりはありません。いつ始めるかは、妊婦健診で医師に運動してよいかを確かめてから決めます。スタジオの受け入れは、La pilates が妊娠16週以降、BDC PILATES が安定期(15週以降)など、安定期に入ってからとするところが目安になります。時期ごとの注意点は次のとおりです。
| 妊娠初期(〜13週) | つわりなどで体調が変わりやすい。新しく始めるのは控え、医師に運動してよいかを確かめておく |
|---|---|
| 妊娠中期(14〜27週) | 16週ごろからの安定期に入ると、受け入れるスタジオが増える。医師の許可を得て、呼吸と姿勢、骨盤底筋の練習から始める |
| 妊娠後期(28週〜) | おなかが大きくなり、バランスをくずしやすくなる。動きを小さくし、座る・横向きの姿勢を中心にする |
| 産後 | お産の方法と回復に合わせて、医師に確かめてから。骨盤底筋の運動は産後すぐから始めてよいとされる(ACOG) |
「いつまで」も決まりはなく、体調と医師の判断しだいです。おなかが大きくなる後期は、動きを小さくし、呼吸と姿勢を中心にした内容に変えてもらいましょう。
マタニティピラティスで期待できること
ピラティスに限った研究はまだ少ないため、ここでは妊娠中の運動全体と、ピラティスでもよく行う骨盤底筋の運動について、研究や指針で示されていることを紹介します。
妊娠中の合併症や体重の増えすぎのリスクを下げる
WHO は、妊娠中に体を動かすことで、妊娠高血圧腎症・妊娠糖尿病・体重の増えすぎ・産後うつなどのリスクが下がるとしています。週150分の中くらいの強さの運動が目安で、ピラティスはウォーキングなどの有酸素運動と組み合わせる筋力の運動として取り入れやすいでしょう。
骨盤底筋をきたえて尿もれを防ぐ
ピラティスでは、呼吸に合わせて骨盤の底の筋肉(骨盤底筋)を締める練習をよく行います。研究のまとめでは、尿もれの無い妊婦が妊娠中に骨盤底筋のトレーニングをすると、妊娠後期の尿もれのリスクが62%、産後3〜6か月のリスクが29%低いと考えられています。すでに尿もれがある人の治療としての効果は、まだ根拠がありません。
姿勢と呼吸を整え、腰や背中の負担を意識できる
おなかが大きくなると、体の重心が前に移り、腰を反らせた姿勢になりがちです。ピラティスは骨盤と背骨の位置を確かめながら動くので、自分の姿勢のくせに気づき、楽な姿勢を探す練習になります。腰痛とピラティスの関係はピラティスと腰痛の記事でくわしく解説しました。
マタニティピラティスの注意点とやってはいけないこと
運動を始めてはいけない・続けてはいけない人
日本の産科のガイドラインの原案は、次のような病気や症状がある人には、運動の種類にかかわらず、始めることも続けることも勧めないとしています。当てはまる人や判断に迷う人は、必ず医師に相談してください。
- 重い心臓や呼吸器の病気がある
- 子宮頸管無力症と言われている
- 出血が続いている
- 前置胎盤・低置胎盤と言われている
- 破水している(前期破水)
- 切迫流産・切迫早産と言われている
- 妊娠高血圧症候群と言われている
出典:日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン 産科編2026』CQ107(パブリックコメント用の原案)
避けたい動きと姿勢
マタニティピラティスでは、ふだんのピラティスの種目をそのまま行わず、おなかと血圧に負担をかけない形に変えて行います。とくに次の動きに気をつけましょう。
| 長く仰向けになる | 大きくなった子宮が太い血管を圧迫し、血圧が下がることがある。WHO は妊娠初期を過ぎたら、ACOG は20週以降の仰向けでの運動に注意を呼びかけている。横向きや座った姿勢に変えてもらう |
|---|---|
| おなかを圧迫する | うつぶせの種目など、おなかに体重がかかる動きは避ける |
| 転びやすい・バランスをくずしやすい | 片足立ちや、マシンの上で不安定になる動きは、支えを使うか別の種目にする |
| 息を止める・強くがんばりすぎる | 会話ができる程度の強さにとどめる(日本の産科のガイドラインの原案)。呼吸を止めずに動ける範囲で行う |
| 暑い部屋で行う | 体温が上がりすぎるおそれがあるので、ホットピラティスは避ける(ACOG)。水分をこまめにとる |
すぐにやめて医師に相談するサイン
レッスン中やレッスンのあとに次のような症状が出たら、すぐに運動をやめ、かかりつけの医師に連絡してください。
- 出血や、水のようなものが流れ出る感じがある
- おなかの痛みや張り、規則的な痛みのある張りがある
- めまい・立ちくらみ・頭痛・胸の痛みがある
- 運動の前から息が苦しい
- ふくらはぎが痛む、はれている
- 胎動がいつもより少ない
出典:米国産科婦人科学会(ACOG)Committee Opinion No.804「Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period」2020年(2023年に再確認)、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン 産科編2026』CQ107(パブリックコメント用の原案)
マタニティピラティスができるスタジオの選び方
妊娠中を受け入れているかを公式で確かめる
ピラティススタジオの中には、安全のために妊娠中の受講を断っているところがあります。2026年に大手12社の公式サイトを確かめたところ、妊娠中を条件つきで受け入れているのは5社で、7社は受け付けていませんでした(2026年の各社の公式サイトの情報)。
| zen place pilates | 条件つきで可 医師の許可と同社指定の同意書で、グループ・プライベートとも受講可 産後:医師の許可があれば可(目安は自然分娩で産後6〜8週、帝王切開で8〜10週) |
|---|---|
| La pilates | 条件つきで可 妊娠16週以降、主治医の許可を得てから。マンツーマンのみのスタジオ |
| BDC PILATES | 条件つきで可 グループは不可。安定期(15週以降)に入り、医師の受講許可書を出せばプライベートを受けられる場合がある |
| the SILK | 条件つきで可 グループは不可。かかりつけ医に相談したうえで、プライベートを受けられる場合がある |
| CLUB PILATES | 条件つきで可 スタッフに申告し、主治医の承諾のもとで参加。利用を制限する場合がある 産後:産後まもない人は利用を制限する場合がある |
| pilates K | 受けられない |
| ピラティススタジオDEP | 受けられない 産後:産後2か月を過ぎ、かかりつけ医の許可があれば可 |
| ルルト | 受けられない 産後:産後3か月以降で、医師の許可があれば可 |
| URBAN CLASSIC PILATES | 受けられない |
| Pilates mee | 受けられない |
| Pilates KASANE | 受けられない |
| Repilates | 受けられない |
受け入れている5社も医師の許可が前提で、そのうち3社(La pilates・BDC PILATES・the SILK)はマンツーマン(プライベート)だけです。条件は店舗ごとに変わることもあるので、予約の前に、通いたい店舗に妊娠中であることを伝えて確かめましょう。
マンツーマン(プライベート)から始める
妊娠中は日によって体調が変わり、おなかの大きさで無理のない動きも変わっていきます。インストラクターが自分だけを見て、その日の体調に合わせて内容を変えてくれるマンツーマンが安心です。zen place pilates もマタニティピラティスはプライベートレッスンを勧めています。マンツーマンは月額が高くなるので、通う期間と回数を決めてから申し込むとよいでしょう。
産前産後の指導資格を持つインストラクターがいるか
ピラティスには、妊娠中と産後の指導を学ぶ民間の講座があります。産前産後の講座を修了したインストラクターが担当してくれるかを、予約のときに聞いておきましょう。zen place pilates のように、修了したインストラクターが全店にいるとは限らないスタジオもあるので、担当を指名できるかも確かめましょう。
予約のときとレッスンの前に伝えること
体験の予約や当日のカウンセリングで次のことを伝えると、体調に合わせた内容にしてもらいやすく、もしものときにも対応してもらえます。
- 妊娠何週か、出産予定日
- 医師から運動の許可が出ていること(同意書や許可書が要るか)
- かかりつけの産婦人科と、緊急連絡先
- 健診で言われている注意(おなかの張りやすさ・血圧など)
- 腰・背中・恥骨まわりなど、痛む場所
- 妊娠前の運動の習慣
レッスンの日は母子健康手帳を持っていくと、体調を聞かれたときに答えやすいでしょう。体験の流れや持ち物は、ピラティスの体験ができるスタジオの記事でくわしく比べています。
産後のピラティスはいつから?
産後にいつから運動してよいかは、お産の方法と体の回復しだいで、医師に確かめてからが基本です。海外の指針(ACOG・WHO)は、経過が順調なら産後早めに少しずつ再開してよいとし、帝王切開のあとは医療者と相談するよう勧めています。日本では、産後1か月健診で問題がなければ体操などを始める、と案内する自治体の資料もあります。
スタジオの受け入れは、zen place pilates が自然分娩で産後6〜8週・帝王切開で8〜10週を目安とし、ピラティススタジオDEP は産後2か月、ルルトは産後3か月以降としています(いずれも医師の許可が前提)。妊娠中は受けられないスタジオでも、産後は医師の許可があれば通えるところがあります。
赤ちゃん連れや託児については、pilates K と Repilates は子ども連れでの参加ができません。ほかの社は公式サイトに全社としての託児の案内が見当たらなかったので、子連れで通いたい人は、店舗に直接確かめましょう。
マタニティピラティスを受けられるスタジオならこの2社
妊娠中に受けるなら、公式サイトで受け入れの条件をはっきり書いているスタジオが安心です。医師の許可と同意書でグループも受けられる zen place pilatesと、妊娠16週から受けられる女性専用のマンツーマン La pilatesを紹介します。各社の料金や形式の比較はピラティスのおすすめスタジオを見てください。
zen place pilates|医師の許可と同意書でグループもプライベートも受けられる
♥こんな人におすすめ
- 近くの店舗で、医師の許可を得たうえでマタニティピラティスを始めたい人
- 産前産後のコースを修了したインストラクターに見てもらいたい人
| 妊娠中の受講 | 医師の許可(許可証は不要)と同社指定の同意書でグループ・プライベートとも受講可。マタニティピラティスはプライベートを推奨 |
|---|---|
| レッスンの形式 | マットのグループ・マシン(リフォーマー)のグループ・プライベート |
| 月4回の月額 | 15,400円(マシングループ月4回) |
| 初期費用 | 入会金 33,000円(グレード01)/22,000円(グレード02)、設備運営管理費 月550円。体験当日の入会で入会金無料 |
| 体験レッスン | マシングループ 3,000円(通常5,000円)・マットグループ 1,000円 |
| 店舗数 | 130店舗以上(全国) |
全国に130店舗以上あるピラティス・ヨガのスタジオです。公式の FAQ によると、医師の許可を確かめて同社指定の同意書を出せば、妊娠中もグループとプライベートの両方を受けられます。許可証そのものを出す必要はありません。
マタニティピラティスは、体調に合わせて進められるプライベートレッスンを勧めています。産前産後のコースを修了したインストラクターが多く在籍していますが、全店にいるわけではありません。体験の予約は電話で受け付けていて、予約のときに妊娠中であることと妊娠何か月かを伝える決まりです。担当できるインストラクターがいる店舗を、そのとき相談しましょう。
La pilates|妊娠16週から受けられる女性専用のマンツーマン
♥こんな人におすすめ
- 安定期に入ってから、マンツーマンでマタニティピラティスを始めたい人
- 女性専用のスタジオで、整体と組み合わせて体を整えたい人
| 妊娠中の受講 | 妊娠16週以降から可。主治医の許可を得てから来店 |
|---|---|
| レッスンの形式 | マンツーマン(整体+マシンピラティス) |
| 月4回の月額 | 40,000円(マンツーマン) |
| 初期費用 | 入会金 10,000円・事務手数料 1,000円(当日入会で入会金無料)、年会費 10,000円 |
| 体験レッスン | 3,000円(通常14,000円・90分) |
| 店舗数 | 110店舗以上(全国) |
全国に110店舗以上ある、女性専用・完全予約制のマンツーマンのスタジオです。公式の FAQ では、妊娠16週以降から受けられ、主治医の許可を得てから来店するよう案内しています。整体とマシンピラティスを組み合わせたレッスンが特徴です。
公式のコラムによると、初回の体験では体の悩みを聞いたうえで、出産予定日・かかりつけの産婦人科・緊急連絡先を確かめてからレッスンに入ります。毎回インストラクターと1対1なので、その日の体調に合わせて内容を変えてもらいやすいでしょう。月4回の月額はグループのスタジオより高くなります。
マタニティピラティスのよくある質問

妊婦はピラティスをしてもいいですか?
医師から運動の許可が出ていて、運動を控えるべき病気や症状が無ければ、妊婦向けに調整したピラティスは取り入れてよいとされています(ACOG)。始める前に必ず健診で医師に相談し、受講はマタニティに対応したスタジオで受けましょう。
マタニティピラティスは危険ですか?
妊婦向けに調整した内容を、許可を得て無理のない強さで行うぶんには、危険な運動とはされていません。ただし、長く仰向けになる・おなかを圧迫する・転びやすい動きは避けます。出血やおなかの張りなどが出たら、すぐにやめて医師に連絡してください。
マタニティピラティスは何週から始められますか?
指針に決まった週数はなく、医師の許可しだいです。週数を書いているスタジオは安定期からで、La pilates は妊娠16週以降、BDC PILATES は安定期(15週以降)としています。通いたいスタジオの条件を、予約の前に確かめましょう。
妊娠初期にピラティスをしてもいいですか?
妊娠初期はつわりなどで体調が変わりやすく、週数を書いているスタジオも、受け入れは安定期からです。妊娠前からピラティスを続けていた人も、続けてよいかと強さを医師に確かめてください。新しく始めるなら、安定期に入ってからが現実的です。
妊娠中にマシンピラティスはできますか?
マシンはばねの力で動きを支えられるので、負荷を小さくすれば妊娠中も取り入れやすい器具です。ただ、BDC PILATES や the SILK のように、妊娠中はマシンのグループに参加できず、プライベートだけを受けられるとするスタジオもあります。マシンで受けたい人は、プライベートの受け入れがあるかを確かめましょう。
マタニティヨガとマタニティピラティスはどっちがいいですか?
どちらも妊婦向けに調整すれば取り入れやすい運動で、体を支える筋肉と姿勢を意識したいならピラティス、ゆったり体をほぐして呼吸を深めたいならヨガが向いています。違いはピラティスとヨガの違いの記事でくわしく比べました。
子連れで通えるピラティススタジオはありますか?
大手12社の公式サイトでは、託児のあるスタジオは見つかりませんでした。pilates K と Repilates は、子ども連れでの参加を断っています。子連れで通いたい人は、近くの店舗に直接確かめるのが確実です。
まとめ|マタニティピラティスは医師の許可を得て、受け入れのあるスタジオで

マタニティピラティスは、医師の許可がある人なら妊娠中にも取り入れられます。始める時期は安定期からが目安で、長い仰向け・おなかの圧迫・転びやすい動きを避け、出血やおなかの張りが出たらすぐにやめることが大切です。
大手12社のうち、妊娠中を受け入れているのは5社で、そのうち3社はマンツーマン(プライベート)だけでした。予約の前に妊娠中であることと週数を伝え、条件を確かめてから体験に申し込みましょう。スタジオ選びはピラティスのおすすめスタジオから比べられます。



